法曹への道 ~その先へ~

予備試験・司法試験合格の現弁護士による主として法律系資格の勉強法に関するブログです。受験時代に苦労・工夫したことや今苦労していることなどを踏まえお伝えしていきます。

【司法試験、予備試験、行政書士、司法書士】  商法の勉強法ー条文の素読

こんにちわ、やきなすです。

 

今回は、商法(会社法)の勉強法についてお伝えします。

 

司法試験や予備試験、さらには行政書士司法書士試験においても、商法(おもに会社法)は重要な試験科目の一つです。

もっとも、会社法は条文の数が膨大ですし、とりわけ企業に勤めたことがない学生にとっては、あまり具体的なイメージも沸きにくく、苦労される方も多いのではないかと思います。

 

そんな方に、これさえわかれば会社法は完璧!という即効薬をお伝え・・・できればいいのですが、私がおすすめしたいのは、「条文の素読です。

 

条文の素読とは、文字通り、条文を1条から順にひたすら読んでいくという勉強法です。

 

「えーー」

「10条で飽きる」

「そんな時間はない」

「それで解けるほど本試験の問題は甘くない」

 

そんな声が聞こえてきそうですが・・・。

 

 

私がぜひともお伝えしたいのが、

会社法の試験問題は、ほぼ条文がすべて

だということです。

 

例えば、以下は平成30年度の予備試験の短答式試験の問題からの抜粋です。

 

〔第16問〕(配点:2) 株式会社の設立に関する次の1から5までの各記述のうち,正しいものはどれか。(解答欄は, [№16])

1.発起人が2人以上ある場合において,そのうちの1人を発起人総代に選定したときは,定款 には,当該発起人総代のみの署名又は記名押印があれば足りる。

2.株式会社の成立により発起人が受ける報酬は,定款に定めがない場合であっても,成立後の株式会社が負担する。

3.発起人は,株式会社の成立前は,定款を発起人が定めた場所に備え置かなければならない。

4.発起人が2人以上ある場合において,株式会社の設立に際して,定款に記載又は記録しない で,成立後の株式会社の資本金の額に関する事項を定めようとするときは,その過半数の同意 を得れば足りる。

5.設立時募集株式の引受人は,創立総会においてその議決権を行使した後であっても,株式会社の成立前であれば,詐欺又は強迫を理由として設立時発行株式の引受けの取消しをすること ができる。

 

この問題の正解は3ですが、

会社法の31条1項には、

発起人(株式会社の成立後にあっては、当該株式会社)は、定款を発起人が定めた場所(株式会社の成立後にあっては、その本店及び支店)に備え置かなければならない。

とあります。

 

条文がそのまま答えになっていることがお分かりいただけましたか??

 

 

ちなみに、ほかの肢も見てみると、

1は、会社法26条1項に

株式会社を設立するには、発起人が定款を作成し、その全員がこれに署名し、又は記名押印しなければならない。

とありますので、全員の署名又は記名押印が必要です。

 

2は、会社法28条柱書に

株式会社を設立する場合には、次に掲げる事項は、第二十六条第一項の定款に記載し、又は記録しなければ、その効力を生じない。(※26条1項は、上を参照ください。会社設立時の定款のことで、原始定款と呼びます。)

とあり、同3号に

株式会社の成立により発起人が受ける報酬

とあります。

したがって、これは定款に定めがないと効力を生じない(=会社は負担しない)ということになります。

 

4は、会社法32条1項柱書に

発起人は、株式会社の設立に際して次に掲げる事項(定款に定めがある事項を除く。)を定めようとするときは、その全員の同意を得なければならない。

とあり、同3号に

成立後の株式会社の資本金及び資本準備金の額に関する事項

とあります。

したがって、定款の定め又は発起人全員の同意が必要です。

 

5は、会社法102条6項に

設立時募集株式の引受人は、株式会社の成立後又は創立総会若しくは種類創立総会においてその議決権を行使した後は、錯誤を理由として設立時発行株式の引受けの無効を主張し、又は詐欺若しくは強迫を理由として設立時発行株式の引受けの取消しをすることができない

とありますので、誤りです。

 

以上のとおり、すべて条文に書いてあることのみで答えが導きだせます

 

ここでは例題として平成30年度の予備試験の商法の1問目を取り上げましたが(単に一番最新の一番最初の問題だから取り上げたまでです。)、見ていただければきっとわかる通り、予備試験の短答式試験ほとんどすべての問題は、条文の知識があれば解けます

 

これはすごいことですよね。

条文を読んで、その中身をきちんと理解して覚えさえすれば、少なくとも商法(会社法)は、合格ラインに十分に届くということなのです。

 

こうお伝えすると、

「そんなこと言われても、条文をすべて覚えるなんて不可能」

なんて思われる方が大勢いらっしゃるかと思います。

 

私も、すべての条文を丸暗記するのは不可能ですし、そうする必要もないと思っています。

 

まずは一度、できれば一日で、会社法の条文を頭から最後まで読んでみてください。

そうすると、会社法の全体像が分かります。

 

一気に読んでみると、同じような条文が同じような配置でいくつもあるということに気づくと思います。

例えば、株式と新株予約権、合併と会社分割、株式交換と株式移転など、似たような制度がたくさんあることがわかります。

あとは、似たようでいて違うところがあれば、なぜそれが違うのか、その理由を理解すれば、忘れない知識として定着させることができるはずです。

 

ちなみに、会社法の条文は、ふつうの六法を読むことでもよいですが、特に以下の会社法法令集を読むのがおすすめです。

プチ解説がついていて、実務に出てからも使えます。


「会社法」法令集第11版 重要条文ミニ解説/会社法ー省令対応表/改正箇所表示 [ 中央経済社 ]

 

 

なお、上記では、予備試験の短答式試験を例に、会社法における条文の重要性をお伝えしましたが、

これは司法試験や予備試験の論文式試験行政書士司法書士などの他の試験でも同様です。

会社法は、もっとも条文がものをいう科目と言って過言じゃありませんので、ぜひとも条文を味方につけて、会社法の実力をつけていってください。

 

条文の素読に慣れたころには、きっと会社法の問題が解けて面白くて仕方ない自分に出会えるはずです…!


◆◆うかる!行政書士総合問題集 2018年度版 / 伊藤塾/編 / 日本経済新聞出版社

 

今後ともできるだけ皆さまに有益な情報をお伝えしていければと思います。

この記事が少しでも皆さまの参考になれば幸いです。

 

 

<今回の名言>

「継続は力なり」


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