【司法試験、予備試験】 民法論文の作法1 -民法的思考
こんにちは、やきなすです。
今回は、民法の論文の書き方の1段目として、民法的思考というものを説明しようと思います。
これはつまり、民法の論文問題を解くときに、どのように筋道を立てて考え、答案を記載していくかという一番基礎的な考え方になります。
早速説明すると、民法的思考とは、
①生の主張を考える(ほとんどが、モノよこせ・金よこせ・やだ、のいずれか)
②生の主張を認めるための法律構成を考える
③その法律構成が認められるための要件を提示する
④問題文の事実を要件にあてはめる
というプロセスを検討することです。
司法試験や予備試験で、問題文に
「AB間の法律関係を論ぜよ」
といった形で出題されたりする可能性もあると思いますが、
この場合も、基本的には、上記の民法的思考に沿って、A(またはB)がB(またはA)に対して、どのような主張・請求ができるかを検討していくことになります。
例えば、Aは、Bから有名な画家の絵画を1000万円で購入したが、後に実はそれが偽物であったことが発覚した(Bも偽物だとは知らなかった)という事案があるとします。
この場合、AがBに対してできる請求という形で、上記の民法的思考に沿って考えてみると、
①1000万円を返せ
②不当利得返還請求
③受益、損失、因果関係、法律上の原因のないこと
④Bが1000万円の利益を、Aが1000万円の損失を受けており、因果関係あり。
法律上の原因はないといえるか?
といった形で検討していくことになります。
ここで重要なのは、基本的に上記の①〜④の中に「論点」というのはないということです。
論点は、上記の①〜④の流れで検討していく過程で、例えば当該法律構成が認められるかに争いがある場合(上記の②の部分)や、条文の要件の文言に争いがある場合(上記の③の部分)に、必要に迫られて論じるものです。
上記の事案で言うと、
不当利得返還請求の「法律上の原因がないこと」という要件の検討過程において、論点を論じる必要が出てきます。
具体的には、
偽物の絵画を知らずに買ったということで、錯誤で売買契約が無効にならないか?(=無効になれば、契約に基づかずに支払った1000万円なので、法律上の原因なくと言える)という思考の流れになります。
ここで初めて錯誤の話になります。
そして、また錯誤の要件を1つずつ検討していきます!
そこまで検討して初めて、いわゆる「動機の錯誤」の論点や「要素の錯誤」の論点を論じることになるのです。
しかも、2020年4月1日に施行が予定されている改正民法では、いままで学説に争いがあった点の複数が条文で明文化されて解決していますので、より一層、論点は条文の要件の検討の過程等でやむを得ず検討するもの視点が大切になってきます。
よく、論点に飛びつくな、という指摘がされることがありますが、まさに上記の民法的思考を無視して、論理的ではない流れで論点を記載すると、このような指摘を受けることになります。
その意味でこの発想は非常に重要ですので、ぜひ当たり前のように書けるように身につけてください。
そうすれば、民法の論文は格段に書けるようになってくると思います。
なお、論文一般の留意点やコツ等については、過去記事の連載もぜひご覧ください。
今回の記事がみなさまの参考になれば幸いです。
<今回の名言>
「勝ちに不思議な勝ちあり。負けに不思議な負けなし。」